手術や入院などで医療費がかさんだ場合は、国民健康保険で高額療養費として後から払い戻される

思わぬ病気や交通事故などで大怪我をして手術をするはめになり、入院を余儀なくされることもあります。

そんな時に民間の医療保険に加入していれば、手術の費用や入院費などはカバーされますが、万が一なんの医療保険にも加入していなければ、手術費や入院費がいったいいくら掛かるのか、心配ですよね。

そんな場合でも、国民健康保険に加入していれば、ある一定の金額を超えた医療費が戻ってくる高額療養費制度あることをご存じでしょうか?

そこで今回はこの国民健康保険の高額療養費制度について、詳しくご紹介していきます。

国民健康保険の自己負担限度額

病院に掛かり1ヶ月の医療費が高くなった時、国民健康保険に加入していれば、自分が住んでいる市町村の役場に行き国民健康保険の窓口で担当者に必要書類を提出し、それが認められれば、限度額を超えた医療費が高額療養費として払い戻されます

70歳未満の場合の上限額

70歳未満の人の場合は2015年1月の診療分から所得区分がそれまでの3区分から、5区分に細分化され、1ヶ月の医療費負担額に上限額が設定されました。

高額療養費の5区分は区分ア・区分イ・区分ウ・区分エ・区分オとなっています。

区分アは、

  • 月収が81万円以上(標準報酬月額83万円以上)
  • 1ヶ月の医療費の負担の上限額の算出方法は、25万2600円+(医療費-84万2000円)×1%

区分イは、

  • 月収が51万5000円以上~81万円未満(標準報酬月額が53~79万円)
  • 1ヶ月の医療費の負担の上限額の算出方法は、16万7400円+(医療費-55万8000円)×1%

区分ウは、

  • 月収が27万円以上~51万5000円未満(標準報酬月額が月収28~50万円)
  • 1ヶ月の医療費の負担の上限額の算出方法は、8万100円+(医療費-26万7000円)×1%

区分エは、

  • 月収が27万円未満(標準報酬月額が26万円以下)
  • 1ヶ月の医療費の負担の上限額は5万7600円

区分オは、

  • 低所得者や住民税非課税の方
  • 1ヶ月の医療費の負担の上限額は3万5400円です。

表にするとこんな感じです。

区分 月収 医療費負担の上限額
81万円以上  25万2600円+(医療費-84万2000円)×1%
51万5000円以上~81万円未満  16万7400円+(医療費-55万8000円)×1%
27万円以上~51万5000円未満  8万100円+(医療費-26万7000円)×1%
27万円未満  5万7600円
低所得者、住民税非課税  3万5400円

もし1ヶ月の医療費が100万円だと国民健康保険の高額療養費制度でいくら戻ってくるのか

例を挙げて計算してみましょう。

月収が30万円だと仮定して、病気で病院に入院して医療費が1ヶ月に100万円だとします。国民健康保険に加入していれば3割負担なので、病院の窓口で支払うのは30万円になります。

月収が30万円だと区分ウになるので、医療費の負担の上限額は、

8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円

になります。

つまり医療費が100万円でも、あなたが負担するのは、8万7430円だけということになります。

後は、役場の国民健康保険の窓口に行き高額療養費の申請をして認められれば、病院に支払った30万円から8万7430円を差し引いた21万2570円が戻ってきます。

医療費の計算時の注意点

病院の医療費が月をまたいで掛かってしまった分、計算上不利になることがほとんどなので、注意が必要です。

高額療養費の医療費の計算は1ヶ月毎に行います。この「1ヶ月」とは、その月の1日から翌月の月末までのことを指します。

そのため、仮にある月の20日に病院に掛かり、その日から翌月の10日まで入院し、退院する時に病院から20万円を請求され、20万円を支払ったとします。

しかしこの場合、高額療養費の対象となる医療費は、月ごとに分けて計算されるため、20万円にはなりません。支払った月で一括で計算するわけではなく、月ごとにかかった医療費を計算することになります。

そのため、区分にもよりますが、月単位で高額療養費制度の1ヶ月の負担の上限額に達しない場合は、この制度を利用できません。

高額療養費制度が対象外となるケース

一ヶ所の病院ではなくいくつかの病院など複数の医療機関に掛かった場合や、高額な料金の個室や、国民健康保険が使えない最先端の先進医療を受けた場合も、高額療養費制度は使えません。

それと、入院している時に病院から出される食事の費用も、高額療養費制度の適用を受けないので注意が必要です。

まとめ

国民健康保険に加入していれば、いざという時に3割負担だけで済みますが、3割負担でも思わぬ病気や事故などで手術をしたり病院に入院すれば、それなりの医療費を病院から請求されることを覚悟する必要があります。

そんな時に国民健康保険の高額療養費制度を利用すれば、1ヶ月の医療費が上限を超えた場合は、どれだけお金が掛かっても差額分が戻ってきます。

意外とこの高額療養費制度のことを知らない人も多いようですが、国が国民のために定めている医療制度なので、使わない手はありません。

また、国民健康保険に加入している家族の医療費を合算する世帯合算と呼ばれる方法で高額療養費制度を利用できることもあります。

なお、老人保健制度の適用者を除く70歳以上の自己負担限度額については、高額療養費制度の上限額も異なりますので、詳しくはお住まいの役場にてお尋ねください。

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