昔は新婚旅行にハワイなどの海外旅行に行ったと言えば、「え~いいな~」とか「羨ましい!!」とか羨望の眼差しで見られたものです。
しかし日本国民も豊かになり、行こうと思えば誰でも海外旅行に行ける時代になってきました。旅行代理店のH.I.Sなどから販売される韓国や香港までのパッケージツアーなどは、1泊2日や2泊3日であれば2~3万円台と、国内旅行よりも安い商品も出回っています。
しかし中には、楽しいはずの海外旅行で交通事故に巻き込まれたり、急病に掛かり現地の病院で手術をする羽目になり、高額な請求書に腰を抜かした人もいます。
そこで今回は意外と知られていない、国民健康保険の海外療養費について詳しく検証してみます。
海外での驚くなような高額治療費の実態
大手保険会社AIUが過去に公表した、海外で盲腸手術をして入院した場合の都市別の治療費の高額ランキングで見ると、最も高かったのがニューヨーク。何と、盲腸手術をしてたった1日だけの入院で243万円も掛かるというから驚きです。今ならもっと掛かると思うと、ゾッとしますよね。
次に高いのは同じアメリカのロサンゼルスで盲腸手術で1日の入院で194万円で、3位のサンフランシスコの193万円と4位のボストンの169万円も盲腸手術して1日の入院費です。
5位にランクインしたのは香港で盲腸手術して4日の入院費で152万円でした。
アメリカの治療費は世界一ィィィ!
アメリカは世界でも最も治療費が高い国で、そのアメリカの中でもニューヨーク州が1番治療費が高く、さらにニューヨーク州でもマンハッタン島があるマンハッタン区の医療費は同じニューヨーク州の他の区よりも倍以上も高いと言われています。
マンハッタン区の初診料は200~300ドルが一般的で、専門医であれば初診料も300~500ドルは覚悟したほうがいいでしょう。
ただ、アメリカに限らず、日本と同レベルの医療設備が整っているタイのバンコクにあるサミティベート病院で盲腸手術をすれば、100万円以上は請求されるでしょう。
海外旅行に行くならば必ず海外旅行傷害保険に加入すべき
H.I.SやJTBなどで航空券を購入する時に必ず、海外旅行傷害保険に加入しますかと尋ねられるはずです。
普通は2泊3日とか3泊4日程度の海外旅行が多いと思われるので、海外旅行傷害保険の保険料も大したことはありません。
特に最近ではネットに特化した保険会社が増えていて、例えばエイチ・エス損保であれば、エイチ・エス損保のホームページに個人プランで1人を選び行先がアジアで、旅行日数が3日であれば保険料はわずか1280円です。
しかし中には海外旅行の期間がどうせ3~4日だし、掛け捨ての保険料が勿体ないと海外旅行傷害保険に加入しない人もいます。
もし万が一ですが、海外旅行傷害保険に加入しないで海外旅行に行き、交通事故に遭ったり急病に掛かっても、国民健康保険に加入していれば海外療養費である程度はカバーできます。
国民健康保険の海外療養費でカバーできる範囲
海外療養費とは、日本からの海外旅行者や海外に赴任している駐在員が、病気や怪我をして現地の病院などで治療を受けたり盲腸手術などをして入院した場合に、帰国して病院に支払った領収書の明細や診療内容明細書などを申請すると、治療費の7割まで払い戻しされる制度のことです。
ただ、日本国内で保険適用になっている医療行為のみしか支給が受けられません。
例えば、美容整形や歯の矯正やインプラント治療、臓器移植など高額な治療費が掛かる治療を受けるために海外へ行った場合には、海外療養費の適応外になります。
また、日本で保険が適応されないような治療や診療を受けた場合や、入院した場合の高額な個室などの差額ベッド代も海外療養費の対象となりません。
つまり、海外療養費でカバーできるのは、もし日本で同じ治療や診療を受けたと仮定して算出された医療費の7割までです。
仮に海外で盲腸手術をして入院し、100万円を請求されても、日本で同じ治療をして60万円しか掛からないとすれば、60万円×70%=42万円までが海外療養費でカバーできる範囲となります。
さらに、海外療養費の支給金額は、支給が決定したその日の外国為替の換算率で計算されます。そのため、もし支給が決定した日に円安になれば、それだけ海外療養費が少なくなります。
国民健康保険用国際疾病分類表を持っておこう
2泊3日とか3泊4日程度の海外旅行であれば、海外旅行傷害保険の保険料も1280円程度なので加入したほうが賢明ですが、それでも加入しないのであれば、万が一のことを考えて国民健康保険に加入していれば、傷病名が記載されている国民健康保険用国際疾病分類表を持参したほうが無難です。
それと、自分が住んでいる市区町村の役場に行けば、診療内容明細書と領収明細書が貰えます。海外旅行に行き何かの事情で現地の病院などの医療機関にお世話になった場合は、まずは治療費の全額を医療機関に支払い、領収書を受け取ることを忘れないようにしましょう。
帰国後に診療内容明細書と領収明細書を持って、市区町村の役場の国民健康保険の窓口に行き、海外療養費の払い戻しの申請をします。
まとめ
海外旅行に行くのであれば、民間の海外旅行傷害保険に加入したほうが無難です。クレジットカードの付帯保険や、国民健康保険の海外療養費である程度はカバーできるとは言え、全額がカバーできるとは限りません。
特に、アメリカのように治療費がずば抜けて高い国に行くのであれば尚更、海外旅行傷害保険に加入すべきです。
タイなどは、どんなに死にかけている重病人でも、保険に加入しているか、お金を支払えるお金持ちでなけば治療を断られることがあります。病院も慈善事業ではないので、日本とは違ってお金を持っていなければ治療もしてくれません。
・・・という厳しい現実ではありますが、もし、海外旅行傷害保険に加入せずに、不幸にも海外で病気や怪我をした場合は、クレジットカードの付帯保険や、国民健康保険の海外療養費でいくらかカバーできることがありますので、現地でもらった領収書の明細や診療内容明細書は必ず持ち帰りましょうね。