
失業軽減措置とは、退職後に国民健康保険(国保)へ加入した際、保険料負担を軽減するための特例制度です。正式には「非自発的失業者に対する国民健康保険料の軽減措置」と呼ばれ、倒産・解雇などによる離職や、雇い止めなどの理由で職を失った場合に適用されます。
通常、国保の保険料は「前年の所得」を基準に計算されるため、退職後に収入が激減しても、前年の収入に基づく高額な保険料が請求されることになります。しかし、失業軽減措置を利用すると、前年の給与所得を30%(100分の30)として計算してもらえるため、大幅に保険料を下げることが可能です。
対象となる人
この措置を受けられるのは、雇用保険の「特定受給資格者」または「特定理由離職者」に該当する人です。具体的には、以下のようなケースが該当します。
特定受給資格者(倒産・解雇などによる離職)
- 会社の倒産や事業縮小による解雇
- 整理解雇、希望退職の募集に応じた退職
- 労働契約の更新拒否(雇い止め)
- パワハラ・セクハラなどによるやむを得ない退職
特定理由離職者(雇い止め・契約満了など)
- 契約社員や派遣社員の契約満了による離職
- 体調不良などのやむを得ない事情での離職
- 転勤により通勤が困難になった場合の退職
具体的な軽減内容
通常、国保の保険料は以下の式で計算されます。
🏢 会社員時代の健康保険
- 保険料=標準報酬月額 × 保険料率(会社と折半)
- 会社が半分負担していたため、実質負担は軽かった
🏠 国民健康保険(通常)
- 保険料=【前年の所得】を基準に算出
- 退職後でも前年の収入が高いと、保険料が高額になる
🔽 失業軽減措置適用後
- 前年の給与所得を30%として計算
- 結果、所得割が大幅に減額される
例えば、前年の給与所得が400万円だった場合:
状態 | 給与所得として計算される額 |
---|---|
通常の国保 | 400万円 |
失業軽減措置適用後 | 120万円(400万円 × 30%) |
これにより、所得割の保険料が大幅に下がり、全体の負担も軽減されるのです。
申請方法
この軽減措置は自動適用ではないため、必ず申請が必要です。手続きの流れは以下の通り。
① 役所で申請する
住んでいる自治体の国民健康保険窓口で申請します。
② 必要書類を提出
✅ 雇用保険受給資格者証(ハローワークで発行)
→ 軽減対象者かどうかを確認するために必要
✅ 国民健康保険加入手続き書類(退職後の国保加入手続きが未完了の場合)
✅ 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
③ 軽減措置が適用される
申請が受理されると、離職日の翌日が属する月から翌年度の3月末までの期間、保険料の軽減が適用されます。
よくあるトラブル・間違えやすいポイント
❌ 自己都合退職は対象外
- 会社都合の退職でない場合、原則として軽減措置は受けられません。
- ただし、「特定理由離職者」と認定される場合は対象になることもあるため、ハローワークで離職票の理由欄をよく確認しましょう。
❌ 申請しないと軽減されない
- 軽減措置は自動的には適用されません。
- 必ず自治体の窓口で申請を行う必要があります。
❌ 対象者である証明が必要
- ハローワークで発行される「雇用保険受給資格者証」が必須。
- これがないと、国保の軽減措置を受けることができません。
❌ 軽減されるのは「所得割」のみ
- 軽減されるのは「所得割部分」のみで、「均等割」や「平等割」は軽減されません。
- そのため、思ったほど保険料が下がらないケースもあります。
経験者から一言:これ適用になる場合は使わなきゃ損!
「退職したら国保の保険料が高額になって焦った……!」というのは、よくある話です。私も退職後に最初の請求額を見てびっくりしました。でも、失業軽減措置を申請したら、かなり負担が軽くなりました。
この制度の最大のポイントは、自動適用ではなく、申請が必要なことです。知らずにそのまま高額な保険料を払ってしまう人もいるので、失業したらすぐに役所で相談することをおすすめします。
「手続きをしないと損をする」のが国保のルールです。退職後は色々と忙しいですが、少しでも負担を減らすために、忘れずに申請しましょう!