会社を辞めて自営業やフリーランスになった瞬間、「国保」と「国民年金」がセットで降ってきます。どちらも市区町村窓口で手続きしますが、運営も給付内容もまったくの別物。なんだかんだごっちゃに考えている人が多くて、これがけっこう損のもとなんです。
本記事では2026年4月時点の最新ルールにもとづき、国民健康保険と国民年金の違い、両方を一緒に切り替える手順、保険料の負担、免除制度、よくある誤解をまるっと整理します。
1. 一行でわかる|国保と国民年金の違い
| 項目 | 国民健康保険 | 国民年金 |
|---|---|---|
| 目的 | 病気・ケガの医療費負担軽減 | 老後・障害・死亡時の所得保障 |
| 運営 | 市区町村+都道府県 | 日本年金機構(国) |
| 加入対象 | 自営業・無職・年金生活者など | 20〜59歳の全国民 |
| 保険料(2026年度) | 世帯所得・人数による(年5万〜100万円超) | 月額17,510円(定額) |
| 給付内容 | 医療費3割負担、高額療養費、出産一時金等 | 老齢年金、障害年金、遺族年金 |
| 払わないと | 短期証→資格証→差し押さえ | 将来の年金が減る、障害年金がもらえない、差し押さえも |
国保は「今この瞬間の医療」のため、国民年金は「将来の所得保障」のため。混同するとどっちもおかしくなります。
2. 退職時はセットで切替|14日以内が原則
会社を辞めると、健康保険(社保→国保 or 任意継続)と厚生年金(→国民年金)の両方を切り替える必要があります。
| 切替先 | 申請期限 | 窓口 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 退職翌日から14日以内 | 市区町村役所 |
| 国民年金(第1号被保険者) | 退職翌日から14日以内 | 市区町村役所(年金窓口) |
同じ役所に行けば両方の手続きが1日で済みます。「どこでやるんだっけ」「窓口違う?」と心配しなくて大丈夫。総合受付で「退職したので国保と国民年金の手続きをしたい」と言えば、必要な窓口を案内してくれます。
持ち物
- ✅ 健康保険資格喪失証明書(または離職票・退職証明書)
- ✅ 年金手帳または基礎年金番号通知書
- ✅ 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
- ✅ マイナンバーがわかるもの
- ✅ 印鑑(自治体により不要)
年金手帳が見当たらない場合でも基礎年金番号がわかれば手続き可。番号がわからない場合は年金事務所で照会できます。
3. 配偶者の手続きも忘れずに|第3号→第1号の切替
会社員(厚生年金)の配偶者として「第3号被保険者」になっていた専業主婦(夫)は、配偶者の退職で第3号資格を失うので第1号へ切替が必要。これを忘れて未納のまま放置すると将来の年金額が減ります。これがけっこう怖い盲点。
- 本人が直接、市区町村窓口で第1号への切替手続き
- 本人の年金保険料も毎月17,510円発生
- 所得が少なければ免除申請を
4. 国民年金の保険料|月17,510円は意外と効く
2026年度(令和8年度)の国民年金保険料は月額17,510円(前年度比で改定)。年間だと21万120円。これは所得に関係なく定額。
夫婦2人で第1号被保険者なら年間約42万円。これに国保料(年30〜80万円)を加えると、合計で年70〜120万円の社会保険料負担。会社員時代の倍以上に感じる人が多いのは当然です。
5. 国民年金の免除制度|国保より使いやすい
国民年金は所得が一定以下なら免除申請ができ、免除されても受給資格期間に算入されます(年金額は減るが、ゼロにはならない)。
| 区分 | 所得基準(単身・概算) | 将来の年金額への影響 |
|---|---|---|
| 全額免除 | 所得67万円以下 | 1/2が反映 |
| 3/4免除 | 所得88万円以下 | 5/8が反映 |
| 半額免除 | 所得128万円以下 | 3/4が反映 |
| 1/4免除 | 所得168万円以下 | 7/8が反映 |
| 納付猶予(50歳未満) | 所得67万円以下 | 0(追納で回復可) |
免除されても10年以内なら追納が可能。経済的に余裕ができてから払い直せば、将来の年金額をフルに戻せます。
失業者の特例免除
失業した人は、本人の前年所得を除外して免除審査ができる「失業特例」があります。前年高所得だった人でも、退職後すぐ免除申請が通りやすい。雇用保険受給資格者証 or 離職票を持参して申請を。
6. 国保と国民年金、両方の負担シミュレーション
パターンA:30歳・自己都合退職・前年収500万円・単身
| 区分 | 年間保険料 |
|---|---|
| 国民健康保険(東京都新宿区) | 約46万円 |
| 国民年金(免除なし) | 約21万円 |
| 合計 | 約67万円 |
パターンB:35歳・会社都合退職・前年収700万円・単身(軽減・免除フル活用)
| 区分 | 年間保険料 |
|---|---|
| 国保(非自発的失業者軽減) | 約22万円 |
| 国民年金(失業特例で全額免除) | 0円 |
| 合計 | 約22万円 |
同じ年収帯でも制度を使うかどうかで年45万円違います。これがミソ。
7. 国民年金を払わないとどうなる?
未納が続くと――
- 将来の老齢年金が減額(または受給資格期間10年に達せず無年金)
- 障害年金がもらえない(保険料納付要件3分の2を満たさない場合)
- 遺族年金がもらえない
- 未納2年超で督促・差し押さえ
とくに障害年金。納付要件を満たさず障害状態になっても1円も出ないのはあまりにきつい。事故や病気はいつ来るかわからないので、最低でも免除申請をしておけば納付要件はクリアできます。これが大事。
8. 国民年金基金・付加年金|上乗せ手段
国民年金だけでは老後の生活は厳しいので、自営業者向けに上乗せ制度があります。
- 付加年金:月+400円で老齢年金を上乗せ。2年で元が取れる超お得制度
- 国民年金基金:掛金は所得控除、給付も年金として計画的に受け取り
- iDeCo(個人型確定拠出年金):自営業者は月6.8万円まで拠出可・全額所得控除
- 小規模企業共済:個人事業主の退職金代わり、掛金全額所得控除
とくに付加年金は知る人ぞ知る神制度。月400円×40年=19.2万円の追加負担で、老後に毎年9.6万円の上乗せが生涯続く。2年でペイ、3年目以降は完全プラス。やらない理由がない。
9. ケーススタディ|国保と年金の選択
ケースA:田中健一さん(28歳・新卒退職→フリーランス独立)
- 国保+国民年金の手続きを退職と同時に
- 前年は会社員年収400万円ベースで国保料が高い → 任意継続も検討
- 国民年金は満額納付+付加年金スタート
- 30代で売上が伸びたらiDeCo・小規模企業共済も併用
ケースB:佐藤美咲さん(45歳・夫の退職で第3号→第1号へ)
- 夫の退職で社保扶養を抜け、国保+国民年金第1号に
- 本人は無職・収入ゼロ → 国民年金は全額免除申請で承認
- 国保料は世帯所得ベースで計算され、夫婦合算で軽減も
- 免除期間も将来の年金額には1/2反映
ケースC:鈴木一郎さん(38歳・育児休業中の妻が第3号→離婚で第1号)
- 離婚成立で第3号資格喪失
- 市区町村窓口で国民年金第1号への切替+国保新規加入
- 養育費・パート収入で生活、所得低めで4分の3免除を申請
- 未納にしないことで将来の年金・障害年金を確保
ケースD:山田花子さん(55歳・うつ病で離職・無職継続)
- 失業保険受給後も就労困難
- 国民年金は失業特例+全額免除で承認
- 国保料は低所得軽減(7割)+傷病減免を申請
- 仮にうつ病が悪化して障害状態になっても、納付要件はクリアしているので障害年金の申請が可能
このケースD、本当に大事です。免除申請が「将来の保険」になります。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 国保と国民年金、どちらか片方だけ払うのはあり?
A. 法律上はそれぞれ独立した義務なので「片方だけ払う」運用は可能。ただし両方とも未納するとペナルティが発生するし、年金は免除申請でゼロにできるので、敢えて払わない理由はありません。
Q2. 結婚して相手の社保扶養に入ったら?
A. 健康保険は配偶者の社保扶養に、年金は第3号被保険者に切替(本人の年金保険料負担はゼロ)。市区町村と配偶者の勤務先の両方で手続き。
Q3. 国民年金を満額払い続けると老後いくらもらえる?
A. 2026年度の満額は年約83万円(月約6.9万円)。40年間納付して満額。免除期間があると比例して減ります。会社員と違って厚生年金分の上乗せがないので、老後資金は別途確保が必須。
Q4. 過去の未納分はどうする?
A. 過去2年以内なら通常納付、それ以前は時効で納付不可(免除承認分は10年以内なら追納可)。年金事務所で確認を。
Q5. 学生は国民年金を払う必要ある?
A. 20歳以上の学生は加入義務あり。所得が少ないので「学生納付特例」を申請すれば在学中は猶予可能。卒業後10年以内に追納すればフル反映。
Q6. 国保料と国民年金保険料は確定申告で控除できる?
A. どちらも社会保険料控除として全額所得控除になります。年末に控除証明書(年金)と納付額証明(国保)が届くので確定申告に使ってください。これは節税効果が大きい。
11. まとめ|国保と年金の付き合い方6箇条
- ✅ 退職したら国保+国民年金を14日以内に切替
- ✅ 第3号被保険者の配偶者も同時に第1号への切替を忘れずに
- ✅ 払えないなら免除申請。将来の年金額・障害年金の保険を確保
- ✅ 付加年金は月400円で2年でペイの神制度
- ✅ 自営業者はiDeCo・国民年金基金・小規模企業共済で老後を補強
- ✅ 両方とも社会保険料控除で全額所得控除。確定申告で節税
国保と国民年金は地味だけど、人生のセーフティネットの最終ライン。退職や独立のタイミングでバタバタしているうちに未加入・未納が続くと、後でかなり大きなツケが回ってきます。役所に1回行くだけで全部片付くので、退職予定の人は早めに動きましょう。
出典:国民年金法、国民健康保険法、日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」、厚生労働省「公的年金制度の概要」、各市区町村国民健康保険条例。
※本記事は2026年4月時点の制度・保険料に基づきます。具体的な金額は日本年金機構・お住まいの市区町村でご確認ください。