メディカルツーリズム(医療ツーリズム)の問題と今後の課題

1. メディカルツーリズムとは?

メディカルツーリズム(医療ツーリズム)とは、外国人が日本の医療を受けることを目的に来日することを指します。

日本の医療技術は世界トップクラスであり、特にがん治療・心臓手術・美容整形・再生医療などの分野で高い評価を受けています。そのため、東南アジアや中国を中心に、日本での治療を求める外国人が増えています。

2. メディカルツーリズムの主な問題点

① 不正な国民健康保険(国保)利用

本来、外国人観光客は日本の国民健康保険(国保)に加入できませんが、以下のような不正利用が問題になっています。

  • 短期滞在者が日本の住民票を取得し、不正に国保に加入する
  • 実際には住んでいないのに、住所を借りて保険証を取得する
  • 加入後すぐに高額な治療を受け、自己負担額を抑えて帰国する

問題点
保険料をほとんど払っていないのに、医療費の大部分を国が負担する
高額な治療費が国民健康保険財政を圧迫し、日本人の負担が増える

② 医療機関への負担増加

外国人患者の増加により、医療機関側の負担も増えています。

  • 言語の問題 → 医療通訳が不足しており、診療に時間がかかる
  • 文化の違い → 治療方針や病院ルールの理解にズレが生じる
  • 緊急時の対応 → 言葉が通じず、適切な医療提供が難しい

問題点
通常の患者よりも診療に時間がかかり、日本人患者の待ち時間が増える
適切な治療を提供できない可能性がある

③ 治療費未払いのリスク

外国人が日本の病院で治療を受けた後、治療費を払わずに帰国するケースも発生しています。

  • 旅行保険に加入していないため、自己負担額が大きくなり支払いを拒否する
  • 治療を受けた後に帰国し、連絡が取れなくなる
  • 海外の医療ブローカーが仲介し、支払いを回避するケースもある

問題点
病院側の経営負担が増大し、赤字になる可能性がある
未払い医療費の回収が困難で、日本の医療制度が悪用される

3. メディカルツーリズムの今後の課題と改善策

① 健康保険の適用範囲の厳格化

外国人が不正に国民健康保険に加入しないよう、厳格な審査が求められています。

住民票取得の厳格化 → 実際に居住していることを確認する
保険加入後の待機期間の導入 → 短期間の滞在者がすぐに保険を利用できない仕組み
短期滞在者向けの「専用医療プラン」の開発 → 国保を使わずに済む新たな保険制度

② 医療費の事前決済・保証制度の導入

事前に保証金を支払わせる仕組み(デポジット制)
クレジットカードなどの支払い保証を義務化
未払いリスクのある国に対し、保険加入を義務化

③ 言語・文化対応の強化

医療通訳の拡充 → 医療通訳士の資格制度を強化し、病院に配置
多言語対応の医療マニュアル作成
外国人向けの診療枠を別途設定し、通常患者の負担軽減

4. まとめ

✅ メディカルツーリズムは日本の医療水準の高さを示すものだが、不正利用のリスクも高い
不正な国保利用、未払い医療費、医療機関の負担が主な問題点
制度の厳格化、支払い保証の強化、言語対応の充実が今後の課題

メディカルツーリズムを適正に管理し、日本の医療制度を守るために、より厳格なルールの整備が求められています。

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