
1. 高額療養費制度とは?
高額療養費制度は、医療費が一定額を超えた場合に、超過分を公的医療保険(国民健康保険・社会保険)が補助する制度です。日本の公的医療制度は国民皆保険制度であり、外国人でも適用条件を満たせばこの制度を利用できます。
しかし、外国人の高額療養費制度の悪用や不適切な利用が問題視されるケースもあります。具体的な問題点を以下で解説します。
2. 外国人と高額療養費制度に関する問題点
① 短期間の在留で高額な医療費を受け取り帰国するケース
- 一部の外国人が短期滞在または短期間の在留資格で日本の健康保険に加入し、高額な医療を受けた後に帰国してしまうケースが報告されています。
- 例:日本で高額な手術や治療を受け、高額療養費制度で医療費の大部分が補助された後に本国へ帰国し、保険料はほとんど支払われない。
➡ 問題点:
✔ 保険料負担が少ないのに、多額の公費が使われる
✔ 帰国後に追跡が難しく、未払いの保険料の回収が困難
② 観光目的の医療滞在(メディカルツーリズム)
- 観光や短期滞在で来日し、日本の国民健康保険に不正に加入して高額医療を受けるケースもある。
- 特にがん治療や臓器移植など、高額な医療費がかかるケースで問題となる。
- 「親族が日本に住んでいる」などの理由で短期間だけ住民票を登録し、保険加入後すぐに治療を受けることもある。
➡ 問題点:
✔ 日本の医療資源が不正利用される
✔ 一部の悪質なケースでは、日本の保険制度を利用した不正なビジネスが行われている
③ 国民健康保険への加入要件の問題
- 日本の国民健康保険は、3か月以上の在留資格があれば加入できるが、これを悪用しているケースがある。
- 実際には住んでいないのに、住所を登録して保険に加入し、医療費を安く済ませる例も報告されている。
- 在留資格の確認が甘い自治体では、チェックが不十分なまま保険証が発行されることも。
➡ 問題点:
✔ 国民健康保険制度の目的が損なわれる(本来は長期居住者のための制度)
✔ 地方自治体の財政負担が増加し、保険料の上昇を招く
④ 日本人の保険料負担増加への影響
- 国民健康保険は「加入者の保険料+国・自治体の補助」で運営されている。
- 外国人が短期間の滞在で高額療養費を利用すると、日本人の保険料負担が増加する可能性がある。
- 財政負担の増大により、将来的に制度の持続可能性が問題視される。
➡ 問題点:
✔ 日本人の保険料が上がる原因になりうる
✔ 財政的な負担が国や自治体にのしかかる
3. 対策と制度変更の動き
① 2021年の制度改正(在留資格要件の厳格化)
- 短期滞在者が国民健康保険を利用できないように、在留資格の要件が厳格化された。
- これにより、3か月以上の在留資格があっても、実際に「日本に居住している証拠」が求められるようになった。
➡ 効果:不正加入の防止が期待される。
② 保険証の即日発行の見直し
- 保険証を即日発行せず、住所確認を厳格化する自治体が増えている。
- 実際に居住しているかの調査を強化し、不正加入を防ぐ動き。
➡ 効果:観光目的の不正利用を抑制。
③ 高額療養費の支給条件の見直し
- 今後、一定期間の納付実績がないと高額療養費を受けられない制度の導入が検討される可能性がある。
- 短期間の滞在者が簡単に制度を利用できないようにするための仕組みが求められている。
➡ 効果:制度の公平性を保ち、日本人の負担増を防ぐ。
4. まとめ
✅ 外国人も高額療養費制度を利用できるが、一部で不正利用が問題になっている
✅ 短期間の在留で高額な医療を受け、帰国してしまうケースが発生
✅ 観光目的での医療利用(メディカルツーリズム)も問題視
✅ 国保加入要件が厳格化され、短期滞在者の不正加入を防ぐ動き
✅ 今後の制度改革で、納付実績を求めるルールの導入が検討される可能性
国民健康保険は、日本に住むすべての人に公平な医療を提供するための制度ですが、不正利用が続くと、日本人の負担が増え、制度の維持が難しくなります。今後の動向に注目しながら、適正な運用を図ることが求められます。