外国人が国民健康保険を悪用して高額医療を受けている!? どうして加入できるの? 悪用されるポイント、抜け穴はこれだ!

日本にいる外国人は医療保険を受けられる?

また、2025年1月、日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024年に日本を訪れた外国人旅行者数は前年比47.1%増の3690万人に達し、過去最多を更新しました。2016年には2403万だったので10年で1.5倍に増えています。

一方、出入国在留管理庁の最新データでは、2024年末時点の在留外国人数は3,768,977人(前年末比+10.5%)となり、こちらも過去最高を更新しています 。

日本を訪れる外国人旅行者の場合、日本人が海外を訪れる時に加入するように海外保険に加入するのが普通で、もし日本を訪れた外国人旅行者が怪我や病気に掛かった場合には、高額な医療費を請求されます。

しかし、在留外国人の場合、要件を満たせば日本の国民健康保険に加入できます。近年ではこの制度を悪用し、留学生と偽って日本に入国して高額医療を受ける外国人が急増しています。

語学留学や技能実習を装い、自己負担1~3割で高額な治療を受けたあと帰国する“悪用ケース”が後を絶たず、厚労省も制度の見直しを検討中です。

そこで今回は、外国人でも加入できる、日本の国民健康保険制度に問題がないのか検証してみます。

厚労省が制度や運用の見直しを検討している国民健康保険

厚労省によると、実際には医療目的で来日しながらも、留学生や技能実習生と偽り、国保に加入して肝炎治療オプジーボなどの高額治療を受け、帰国後に全額自己負担を免れる事例が増加しています。政府は、在留資格の適正管理強化と、国保加入手続き時の情報連携強化を検討しています 。

本来の目的である国民の健康を守るという国民健康保険の趣旨としては大きな問題です。

日本を訪れた外国人旅行者の場合は日本の国民健康保険に加入できませんが、留学生や技能実習生の場合は、日本の国民健康保険に加入できるためです。

本当は医療目的で日本を訪れているのもかかわらず、入国審査では語学目的で来日したと偽って国民健康保険に加入して高額医療を受けるという、悪質な手口です。

国民健康保険を悪用するケースで多いのが、肝炎の治療や、高額ながん治療薬のオプジーボを使った治療、移植医療などの高額医療を受けるというケースです。

医療目的での滞在を隠して来日

  • 偽装ビザ:入国時に「語学留学」「技能実習」を申告し、学生ビザで来日。
  • 悪用のターゲット:肝炎治療、高額抗がん剤、臓器移植など、数百万円単位の医療行為。
  • 帰国後の逃避:治療費は自己負担1~3割のまま、日本を離れれば追徴が難しい。

本来、医療目的の来日は「医療滞在ビザ」が必要で、その場合は国保に加入できず、自己負担100%となります。

国民健康保険を悪用しているのは、主に中国人をはじめとする、アジア地域から日本を訪れている外国人で、その多くは日本での治療が終わると帰国するというものです。

本来、医療目的で来日する外国人の場合は医療滞在ビザを取る必要があり、その場合は国民健康保険に加入することはできず、日本で受けた医療費は全額自己負担になります。

厚生労働省は、日本を訪れる外国人の国民健康保険の悪用を把握していて、厚生労働省が推進する医療ツーリズムの中で、このような国民健康保険の悪用が拡大すれば、日本の医療費の増大につながるとして、在留資格の適正な管理や国民健康保険制度の見直しも必要だと訴えています。

外国人が国民健康保険に加入する必要があるケース

2012年(平成24年)7月9日から改正住民基本台帳法が施行され、合法的に日本に3か月以上在留する外国人住民で、

  • 健康保険組合・協会けんぽ・共済組合・国民健康保険組合など会社の健康保険に加入していない場合
  • 生活保護を受けていない方で75歳未満の方

これらに該当する方は、住民登録している各自治体の国民健康保険に加入する必要があります。

外国人が国民健康保険に加入できないケース

在留資格や在留期間によっては、国民健康保険に加入することができません。

以下の場合は、加入できません。

  • 在留期間が3か月以下
  • 在留資格が「特定活動」で、医療目的で滞在する外国人とその帯同者
  • 在留資格が「特定活動」で、観光・保養その他これらに類似する活動を行う18歳以上の方とその外国人配偶者
  • 日本と医療保険を含む社会保障協定を結んでいる国の外国人で、本国政府からの社会保障加入の証明書がある場合

改正住民基本台帳法が施行されるまで、外国人の場合は、1年以上の在留期間が決定されていることが国民健康保険の加入要件となっていましたが、この住民基本台帳法の改正に伴い、3か月を超える在留期間が認められた外国人の場合は国民健康保険に加入する義務が生じました。

在留期間が3か月以下でも国民健康保険に加入できるケースがあります

在留資格が「興行」・「技能実習」・「家族滞在」・「特定活動」の場合、在留期間が3か月以下であっても、滞在が3か月を超えることを証明する書類がある場合は、国民健康保険に加入できます。

なお、「特定活動」においては、上記「加入できないケース」の要件のとおり、

  • 在留資格が「特定活動」で、医療目的で滞在する外国人とその帯同者
  • 在留資格が「特定活動」で、観光・保養その他これらに類似する活動を行う18歳以上の方とその外国人配偶者

に該当する場合は、国民健康保険に加入できません。

まとめ


コラム:こんなときは…

  • 病院で保険証を提示する際に要注意 外国人患者の保険加入状況は医療機関が確認します。ビザの種類や在留期限を示す在留カード、保険証、パスポートの提示を求められることもあるので、常に手元に用意しましょう。
  • 短期滞在でも長期化の可能性あり 予定より長く日本に滞在する場合は、3か月を超えた時点で国保加入の手続きを忘れずに。入国時の短期観光と異なる目的で滞在が延びると、後から高額な未加入期間の保険料を請求されることがあります。
  • 地域によっては在留資格の証明書が必要 一部の自治体では「将来3か月超滞在予定証明書」の提出を必須としています。手続き前に自治体サイトを確認し、必要書類を準備しておくとスムーズです。
  • 旅行保険と公的保険の使い分け 観光や短期商用で来日する場合は、自費診療になるケースがほとんど。渡航前に国内外の旅行保険に加入しておくと、医療費の負担がぐっと軽くなります。
  • 情報連携の強化に期待 将来的には入国管理局と各自治体・医療機関とのデータ共有が進み、不正利用の防止と適切な保険運用がより確実になる見込みです。制度改正の動きをチェックしておくと安心です。

まとめ

日本の保険制度では、保険適用外治療を除き、1割から3割の自己負担で高額な治療を受けることができます。

また、合法的に日本に3か月以上在留する外国人住民であれば、日本人と同じように国民健康保険に加入することができるので、安心して日本で生活ができます。

日本の治療費はかなり高額なので、健康保険証を持たなかった場合に、病院など医療機関によっては診療を拒否されることがあるとは言え、外国人向けに健康保険の門戸を開いていることは間違いありません。

しかし、それはあくまで、制度の趣旨を遵守した上でのものであって、国民健康保険を悪用する外国人の存在は見逃すべきものではありません。政府の対応が求められます。